研究テーマ

イネの生殖障壁の理解と打破に関する研究

生物には生殖隔離障壁と呼ばれる「種(しゅ)」の壁があり、遺伝子の自由な交換を妨げています。この「壁」は、種間交配により育種を行う際に大きな障害となります。私たちは、イネの生殖隔離障壁の一つである「雑種不稔性」(雑種の種子が実らないこと)をモデルケースにして、生殖隔離障壁がどのような分子機構で生じるのか、どうやって進化してきたのか、どうすれば打破することができるのか、ということをテーマに研究を進めています。

具体的には日本人の主食であるイネ(アジア栽培イネ)の近縁種である、アジアの野生イネ、アフリカのイネなどを用いています。これらのイネと、アジア栽培イネとの雑種を作出し、花粉および種子の退化を引き起こす遺伝子を明らかにしていきます。また、突然変異やゲノム編集などの手法を用いて、花粉や種子の退化を引き起こす遺伝子を改変し、雑種を実らせる手法の研究も進めていきます。

野生イネの適応性に関する研究

アジアの熱帯地方には野生のイネが自生しています。この野生イネは、我々の主食であるアジア栽培イネの祖先とよく似ていたと考えられ、栽培化される前のイネの姿を今も保持しています。野生イネが持っている、特に面白い形質として、地面に水平に広がるように成長する、開帳性が挙げられます。この開帳性は、自身の受光面積を広げ、自然界で生き延びるために重要な形質であると考えられています。では、野生イネは、どのような仕組みで水平に成長しているのでしょうか?私たちはこの問題に対し、遺伝学と数理モデルを組み合わせた解析を行い、野生イネが自然界で生き抜くために必要な本質的な機構についての研究を進めています。

数理モデルを用いた植物の「かたち」と「動き」に関する研究

植物の複雑な「かたち」や、「動き」は、どのようにコントロールされているのでしょうか?私たちは、数理モデリングという手法を用い、植物のかたちや動きを計算機で再現することで、その本質的なメカニズムを探りたいと思っています。かたちや動きを把握するために必要な計測手法の開発も行っています。また、モデルを利用することで、植物の進化など、再現が不可能な現象の理解も行いたいと考えています。個々の研究に合わせて、イネ・ダイズなど、様々な作物を用います。かたちと動きのメカニズムを知り、これまでにない作物の創出を目指します。